90年代の日本のロック/ポップシーンに旋風を巻き起こしたL⇔R
ついにiTunesで全曲配信決定!

1992年当時、サンプリングや、今で言うハードディスクレコーディングを駆使した既存の音の引用等の手法はすでにあったものの、それらをある意味日本から欧米への屈折した音楽への愛情表現の手段として用いられるのが主流だった時代に、その流れにあえて逆行する様にポップ・ミュージックへの愛情と理解を真っ向から爆発させたような楽曲のリリック、古今東西のポップソングの最良のエッセンスを3分間の中にこれでもかと詰め込んだメロディー、一曲の中で目まぐるしく移り変わる楽器編成、アレンジ等どれをとっても独特で、それでいて突き抜けたその音楽性は、発表と同時に音楽ファンの間で熱狂的に話題になり、彼らの存在が音楽雑誌、ラジオ等数々のメディアに取り上げられる事になる。

インディーズという概念がまだ一般的ではなかった時代に、それに準ずるメディアとして日本で発足して間もないカレッジ・チャートやリスナーリクエスト主体のラジオ番組で幾多の賞を受賞するなど、徐々にその存在を認識されてきたこの頃の彼らではあったが、ここでも又ライブ活動には乗り出さず次のアルバムの製作に取り掛かる。

前作から、7ヶ月という短いインターバルで発表されたセカンドアルバム「LOUGH AND ROUGH」は前作の「おもちゃ箱をひっくり返したような」多彩なポップセンスを継承しつつも、ファンの間で人気の高い「Younger than yesterday」「BABY BACK」などのミディアム・テンポの楽曲、彼らのコーラスグループとしての素晴らしさが楽しめる「LOUGH SO ROUGH」等、セカンドアルバムにしてすでに深みすら感じさせる名盤に仕上がっている。

音楽的な観点からここまでの彼らの活動を客観的に考察してみると、当時彼らがインタビューなどで度々繰り返してきた発言「やりたい事を全部サウンドの中に詰め込む」というある意味パンクロック以降の世代に良く見られる無邪気とも取れる発言が、実際の楽曲の中に確実に消化されている事が確認できるが、そういった精神性はある意味「まとまりがない」といった逆の意味での批判も呼び寄せる要因になりがちである。しかしながら、後にバーニーズ・ニューヨークの選任イラストレイターとして世界的な評価を得る事になるジャン・フィリップ・デロームを彼らのシングル、アルバムその他のデザインスタッフの中心に迎えたことによって、彼らが本質的に伝えたかったポップスの淡い質感や、開放的な明るさを音だけでなく視覚も通して表現することに成功した当時のメンバーも含めたスタッフチームのセンスは特に現代においては再評価されてしかるべきものである。



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